はかりしる

 ひとりになれる場所を探して校舎を彷徨った。けれど結局、私の前には『倉庫D』の文字がある。これではただ遠回りをしただけだ。戸に手をかける。鍵はかかっていない。じくじくと疼く痛みに力が入らなかった。
 太刀川くんは中にいるだろうか。鍵を開けたのは朝で、同級生の彼女とまだ話している可能性もある。それか、もうここには来ないかもしれない。私がここの鍵を持っているから。勉強はあの美しいひとに教えてもらったらいいし、遺書だって、もともと力になれるかわからないと言っていた。私はいてもいなくても構わない。彼の人生になんの影響も及ぼさない。そして私の人生にも、彼はなんの関わりもないはずだった。それが、正しい姿のはずだ。
 物音は聴こえない。ゆっくりと息を吐いて、そっと戸を開けた。心臓が高鳴る。からり、とわずかな隙間から中を窺う。――だれも、いなかった。
 ようやくひとりになれる。そう安堵するはずだったのに、がらんとした教室に胸はただ痛みを増した。居てほしかったんだ。また笑みが溢れ落ちる。ひとりになりたかったくせに、私はここに彼が居てほしかった。
 からからと戸を引き、からだを教室のなかに滑り込ませて閉める。そこで気付いた。窓が開いている。珍しくからりと乾いた涼風が吹き込んで熱気を攫った。いつもの机の上にノートと教科書、いちごオレ。
「たち、かわ、くん?」
 勝手に震える声で呼びかけるも、返事はなかった。きょろりと教室を見渡す。どこにも彼の姿はない。どうにか足を踏み出しぎこちない動きで机に近づいた。
 ノート、教科書、筆箱、いちごオレ、電子辞書。それから、ルーズリーフが一枚。
『ボーダーからよびだし。ほうかご もどってくる。シュクダイやったぞ!』
 のたくった字は、間違いなく太刀川くんのものだ。いちごオレの紙パックには水滴がついている。触れればまだ冷たい。置かれてから、少しだけ時間が経っているらしい。
 息を深く吐いた。膝に力が入らなくて、しゃがみ込む。胸を刺すこの感情をなんて呼べばいいのかわからない。
 よかった、うれしい、情けない、ばかみたい、こわい、こわい。ほんとは、彼はどう思っているんだろう。文字から彼の考えは読み取れない。
 膝をついた床は冷たかった。おまけに固く、皮膚の下の骨にあたる。痛みにゆっくりと立ち上がって、椅子に座った。
 太刀川くんのノートをぱらりとめくる。書き置きにあった通り、宿題として出した問題が解かれている。計算式を目で追う。合っている。ときどき途中式を書き直した跡もある。答えを見るとか、そういうことはたぶんしていない。けれど、間違いもない。なかった。あの美しいひとが、傍についていたからだろう。だから、きっと再試も乗り切れる。私がいなくても。
 つきり、と頭に痛みがはしる。こめかみのあたりに指を添えれば血管が脈打っていた。どくどくと暴れるような感覚が指のはらを震わせる。少しずつ痛みが強くなっていく。責め立てるような偏頭痛は久しぶりの感覚だった。
 くらりらと視界が明滅していた。まぶたを伏せてどうにかやり過ごす。つきつきと頭が締め付けられる。耐えきれなくなって、机のうえで腕を組み、そこに顔を埋めた。
 ほんのすこしでいいから休みたい。なにもかもから逃げ出してしまいたかった。

   *

 おとうさんとは、六頴館高校で出会ったんだよ。あなたも通うの楽しみだね。
 幼い頃から事あるごとに聞かされたふたりの馴れ初めは、たぶん中学生のときにはもう重みになっていたと思う。母と父にその意図がなくても、自分の立っている場所ががりがりと削られていくような感覚があった。親族の多くが六頴館を出ていたのもあったのだろう。ふたりの娘は六頴館に行くのだと、周りのだれもがそう思っていた。
 刷り込まれたその言葉が、明確に呪いとなったのは受験に失敗したときだ。
 勉強していい高校――六頴館に入って、いい大学に入って、いい企業に入社するか公務員になって、程よい頃に結婚して、子どもを産んで、幸せになる。それが、およそ想定されていた私の人生のすべてだったのに。

 そわり、とくすぐったさを感じて身をよじる。なにかあたたかなものが肌の上を這って――いや、撫でて、いる?
 ふわりと意識が浮上する。いつのまにか眠っていたらしい。からだに熱が燻っている。お腹のあたりが特に熱く汗でじとりとした。夏は昼寝に向かない。ゆっくりと瞼を持ち上げながら考える。眠る前はなにをしていたっけ。視界は暗い。記憶を手繰り寄せる。組んだ腕の隙間からかろうじて光が入り、天板の木目が見えた。
 あぁ、思い出した。太刀川くんと同級生が話していて、ひとりになりたくて、ここはあの空き教室で、今は昼休み――なのだろうか、今も。
「――っ!」
「うおっ」
 がばりと身を起こせば、ここにいるはずのない人の声が響く。目の前にだれかがいる。だれなのかは分かっているけれど信じられない。ぱちぱちと瞬いて霞む焦点をどうにか合わせる。
「急に起きんなよ、びっくりすんだろ」
 気怠げな瞳の形がいつもより丸い。それで、太刀川くんがほんとうに驚いているらしいことがわかった。
 じわじわと頬が赤くなる。うれしくて、うれしいと思うことが恥ずかしくて。同級生の言葉がよみがえる。関わらない方がいい。彼は、どう思ったのだろう。顔を見れなくて視線を下げれば、彼の書いたルーズリーフがそのままになっていた。
『ほうかご もどってくる』
 すっと体温が下がる。背中からうなじにかけてわっと総毛立ち、おそるおそる彼を見た。
「い、いま、何時……?」
「三時半。初めてサボった感想はどうだ、みょうじ」
 にやりとした太刀川くんに、声にならない悲鳴が出た。三時。十五時半。自分の手首に腕時計があることを思い出して見遣れば、それは確かに三と六を指していた。今日の授業は六限で終わりだから、午後の授業をまるまる欠席したことになる。そんな、と頭を振ればつきりと痛みがあった。頭痛はまだ治っていなかったらしい。
「ンな大したことじゃねえって」
 正面に座りながら、太刀川くんは笑っていた。彼にとってそれは全く重いことではないのだろう。頬杖をつきながら面白そうにしている。
「あ、謝ってくる」
 がたん、と立ち上がれば、太刀川くんが「まあ待て」と引き止める。
「どこに居たのかって話になるだろ、今は」
 この空き教室は彼の秘密の場所だ。告げ口はしないと約束したし、かといって他にどこに居れば教師に見つからず過ごせるのかは知らない。
「う……そ、そっか」
「大丈夫だって。体調悪くて帰ったことにしとけ」
「でも、靴も残ってるのに?」
「あー……履き替えるのも忘れるぐらい体調悪かったとか」
「そんなことある?」
「俺はあるけどな。体調悪くないときでも、わりと」
 はっはっはっ、と笑う太刀川くんの目は本気だった。冗談でも、おためごかしの嘘をついているようにも見えない。なんだか気が抜けて、ひとまず椅子に座りなおす。
「そうそう、それでいンだよ」と、したり顔で太刀川くんが頷いた。
「……ボーダーは大丈夫だったの?」
「おう。シフト入ってたやつが遅れるとかで。そいつが来るまでの穴埋め」
 ネイバーも出なかったしな、とくちびるを尖らせて、つまらなさそうに言う。不謹慎ということはさておいて、怪我がなさそうでよかった。ボーダーのひとたちがネイバーとの戦いで傷を負わないことは知っているけれど、ほんとうに間違いなくそうなら、彼はきっと遺書を書こうなんて思わなかったはずだ。
「で?」
 頬杖をついたまま太刀川くんはじっと私を見つめていた。いつになく――真剣そうに。それこそ遺書の書き方を頼まれたときよりも、ずっと。
「なんかあったか。サボりたくなるようなこと」
「……それ、は」
 つ、と息が詰まる。木立の影のような瞳が少しだけ波立った。不機嫌が滲んでいる。なにに対してだろう。荒れた瞳が見ているのは、私だ。
「……さ、サボりたくてしたわけじゃなくて……頭が、痛くて」
「今は?」
「ちょっと良くなった、かな」
「そんだけ?」
「うん」
「嘘つくの下手だろ、おまえ」
「うそじゃないよ」
 ぎい、と胸の奥が軋む。頭が痛かったのも、授業を休むつもりがなかったのも本当だ。けれどそれは結果的にそうなったというだけのことで、私は、どこかへ逃げたかった。ひとりになりたかった。同級生のいる教室に戻りたくなかった。
「ふーん」
 声は冷たかった。やめたほうがいいよ。そう言った同級生の声と同じくらい。
 沈黙をどう取り繕えばいいのかわからない。じくじくと膿むような時間を過ごしたあと、それを破ったのは太刀川くんだった。
「なぁ、なんでいつも腕時計してんの?」
「え、」
 ぴしり、と体が硬まった。太刀川くんが頬杖を解いて、机の上に置いた私の手首をひっくり返し、腕時計の文字盤を指先で小突いた。こつ、と鈍い振動が伝わる。
「これのせいもあるんじゃねえの。うわさ」
 自殺未遂の。言葉にはされなかったけれど、そういうことだった。文字盤をこつりこつりと叩く爪先を見つめる。
「外せよ」
 いつもの、いい意味での軽薄さがなかった。瞳に揺らめく苛立ちがだんだんと明瞭な形をとる。私が腕時計を外さないのはこの下にリストカットの痕があるからだ。そんなうわさがあるのも知っている。それでも外さないことを選んだのは私だった。
「……い、嫌」
「なんで。うわさ減るだろ、外したら」
 眇められた瞳に肩が震える。彼は怒っていた。 きっと私が彼の想いを踏みにじるような真似をしたから。でも、それにしては彼は、うわさそのものを否定しようとしている。私のうわさと太刀川くんは関係がないのに。
「……太刀川くんこそ、なんでそんなこと、言うの。べつに、私がどう言われてても関係ないでしょう」
 関係ない。私と太刀川くんの間には、同じ中学校だったという事実と、この数日間の関わりしかない。再試に受かって、遺書も書き終えてしまえば、友達でもなんでもないただの他人になる。私と彼は、ちがういきものだから。だから、放っておけばいいのに。
 太刀川くんはぎゅっと眉を寄せ、小さく舌打ちをこぼした。
 机の下で膝をひたりと閉じる。そうしなければ膝が笑い出してしまいそうだった。彼を怒らせて、彼に失望されたのが震えるほどこわい。身から出た錆だった。同情の余地はないのだと私がいちばん知っている。
「……ムカつくから」
「……ごめん、」
「いや何でおまえが謝るんだよ。違う。……みょうじが悪く言われんのが、ムカつくんだよ」
 ぽそりと付け足された言葉に、ぱちりと視界が瞬いた。
「な、なんで?」
「はあ? ダチのこと悪く言われたらムカつくだろ。普通に」
 太刀川くんは苛立ちの薄れたちょっときまりの悪い顔で、こつり、と文字盤を叩いた。悪く言われたら、むかつく。友達だから。友達。ともだち、だったのだろうか。私と彼は。
 じわじわと胸が熱くなる。そのうち瞳のあたりまでのぼってきて、危うく溢れかけた。うれしい。それからやっぱり、情けない。私はそんなことを言ってもらえる人間ではなかった。それが申し訳なくて、情けなくて、いやだ。
 くちびるを噛んでやり過ごしていれば、太刀川くんが目を丸くする。
「おい、泣くなよ。俺が泣かせたみたいだろ」
「……泣いて、ないよ」
「だから嘘つくの下手か、おまえは」
 はあ、と溜息を吐いた太刀川くんが「ハンカチとか持ってねえから」とだけ呟く。まだかろうじて雫は瞳に留まっていた。「大丈夫」まばたきで抑えながら応える。
 こつり、と彼の指がやさしく文字盤を叩いた。ちらりと見れば、あと十数秒でホームルームが終わる。正確な時間よりも早いチャイムが鳴り止むまで、私も太刀川くんも無言だった。

 音が途切れると同時に文字盤から指が離れて、太刀川くんはまた頬杖をつく。瞳は元の凪を取り戻していた。
「……悪かった。イライラしてただけで、おまえにムカついてたわけじゃねえから」
「ううん」
 ごめんね。
 吐息混じりに囁けば、太刀川くんは「だから何でおまえが謝るんだよ」と笑う。かといって他に何が言えるだろう。太刀川くんがイライラしたのは、きっと同級生の言葉に対してだ。私がもっとちゃんとしていたら、言われなかったことだった。
「まあ、何もねえのに腕時計つけっぱでうわさ放置してるのにも、ちょっとは腹立ったけど」
「それは……――何もないのに、って、言った? いま。手首に?」
 耳元を滑っていく言葉が引っかかり、きゅっと喉が締まる。太刀川くんはいつもの顔のまま首を傾けた。
「ないだろ」
「あるよ! じゃなくて、え、なんで、どうして、」
「……あー、寝てる間に見た。こう、指を」
 言葉と同時に、太刀川くんは再び指を伸ばし、手首とベルトの間に滑り込ませた。かさついた指先が肌に触れる。一瞬のことだった。
「いれて」
 くっ、と指が持ち上がってベルトが引っ張られて――ずっと隠していた肌が露わになる。
「な?」
「なっ、なにしてるの! ひとが寝てるあいだに!」
 手首を胸元に引き寄せて、もう片方の手で包み隠す。荒げた声は悲鳴に近く、太刀川くんはびっくりした顔で私を見た。
「だから悪かったって。そんな怒ることないだろ。何もねえんだし」
「あ、あるよ。あったでしょ」
「何が」
「だから、あのっ、」
 頬に熱が集う。太刀川くんの訝しげな顔から視線を外す。ぎゅっと手首を握り、天板の木目を見た。沈黙の隙間に層を数える。
 この腕時計の下に、みんなが思うような傷はない。
 私は――できなかったのだ。そういうことを、なにひとつ。それができる人間だったら、あの冬の夜にあんなに情けなく、みじめな想いをしていない。
 それに、うわさの前から腕時計は私の手首にあった。だからこれは、本当に、そういうものではないのだ。
「いや、ほんとに何もなかっただろ。何で隠してんだよ」
 呆れたような声だった。
「勉強はじめらんねえけどいいのか」
 続けられた声はすこし意地悪だ。それを言われると弱い。太刀川くんが諦めればいいだけの話ではあっても、事の発端は私のうわさだ。
「……わ、笑わない?」
「ん? まあ、たぶん」
 頼りない返事だったが、むしろそのくらいの方がよかった。すう、と息を吸い込む。数秒だけ息をとめて、笑われる覚悟を整えた。他人からみればくだらない理由なのはわかっている。
「……、……ほくろ」
「は?」
 ゆっくりと顔を上げれば、心底意味がわからないという顔をした太刀川くんが、いた。

「腕時計を外したくなかったのはほくろを隠すため、ってことか?」
 太刀川くんは約束通り笑いこそしなかったが、呆れきった声で言った。頬の熱を持て余したまま、机の上に置かれた太刀川くんの手を見る。節だった大きな手は私のものとはちがっていた。剣道をやっていたせいもあるんだろう。
「……コンプレックス、なの」
「気にしすぎだろ」
「だって三つ並んでて、すごく変な……」
「そんなんあったか?」
 よし、見せてみろ。とでも言いたげに大きな手を差し出した太刀川くんへ、ふるふると首を横に振る。顔が熱い。太刀川くんは「ほう?」と何故か笑みを深めて、がたりと椅子から腰を浮かせた。凪いでいた瞳がきらりと光る。
「まあまあみょうじ。大丈夫だから」
「なにが」
「痛くしない」
「い、いやだよ」
 しばらく見つめあった。「まあ聞け」と太刀川くんが椅子に座りなおして言う。
「隠されると見たくなるのは男のサガだ」
「しらないよ」
「じゃあ勉強になったな」
 よし。一人で頷いた太刀川くんが「一回も二回も変わんねえって」と諦め悪く手を差し出した。くっきりとした生命線が長く伸びる、豆のできた手のひらはやっぱり大きい。自分の柔い手が恥ずかしくさえ思えてくる。
 瞳は木漏れ日が射したように爛々と輝いていた。太刀川くんがその目をするのは、ボーダーで師匠と仰いでいる忍田さんがいかにすごいか、と話すときぐらいだ。それが、今は私に向けられている。
「……笑わない?」
「笑わない笑わない」
 何十秒かは迷った。それでも私は腕時計を外し、晒した手首を彼に委ねることにした。

 反応を見たくなくて、瞼を閉じて手首を差し出す。ぷらんとゆれたそれを、かさついた手が下から支えてくれた。ひんやりとつめたい。私の手が熱いだけかもしれないけれど。
「あー、なるほど。確かにちょっと目立つかもな」
 太刀川くんの声がいつもより近い。目を閉じているからだろうか。するり、と手首の内側に指のはらがふれる。小さな凹凸を確かめるように、ゆっくりと薄い肌のうえを滑る。そわそわとしたものが心臓まで駆け上って、座ったまま身動いだ。
「もう、いい?」
「んー……つうか顔赤いな。大丈夫か」
 熱中症? と訊ねる声には首を振る。暑いことには暑いが、ぼんやりとはしていない。いつの間にか頭痛も治まっていた。
「は、はずかしい、から……」
「ふうん。なんつうか、あれだな、ちょっと……あれだ、おもしろいな、みょうじ」
 とん、と指がやさしく手首をたたく。ぴくりと指先が震えた。
「勝手におもしろがらないで」
「悪いわるい」
 ぱっ、と手が離される。ぱちりと目を開いて、すぐに腕時計を巻く。それから太刀川くんを見ると、その瞳はまだ私の手首を捉えていた。
「も、もう見せないよ」
「何も言ってないだろ」
「……勉強はじめていい?」
「へいへい、りょーかい」
 胡乱な目で太刀川くんを見れば、へらりとした笑みが返される。やっぱり太刀川くんは、ときどきこちらの気持ちに鈍くなる。デリカシーがないのだと思う。人に向かって失礼な物言いだけれど、間違っていない自信があった。
「今日はなにすんの?」
「数学はひと段落ついたから、国語と英語。覚えてるかチェックしよう」
 鞄から現代文と古典の問題用紙を出す。太刀川くんが書き込めるように私が解いた跡を消して、図書館に行ったついでにコピーしてきたものだ。
 だいぶ露骨に顔をゆがめた太刀川くんが、一転、何かに気付いてぱっと顔を輝かせた。日曜日にも見たあの顔と近いようでどこかちがう。
「そういや宿題みたか? 全部やったぞ」
「うん……見たよ。できてた、ちゃんと」
 机のうえに置きっ放しにされたノートを撫でる。彼のとなりにいたあの美しいひとを思い出して、どうしてか、胸がつきりと痛んだ。


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