オーチャド・ティー

 かちゃり。店内とパントリーを繋ぐ扉のドアノブが回る。洗い物中の水音にかすかに混じった音。視線を向ければ、扉が小さく開いて見慣れた顔が見えた。
「おじいちゃん」
 思わず声に出せば、月久はほっと相好を緩めた。耳聡くそれを拾ったらしい、カウンターに座る常連客――いつも黙って新聞を読んでいる老年の男性が、やや顔を顰める。「遅い、馬鹿者め」くぐもったような呟きは月久の耳にも届いたのだろうか。
「すまないね、月子。大変なときに傍にいられなかった」
「ううん。来てくれてありがとう」
 月子が答えると、男性客はひとつ溜息をつき、新聞を畳む。そして空になったカップの横に代金ちょうどの小銭を置いて立ち上がった。
「ありがとう」
 挨拶なしに去ろうとする背中に月久が声をかけると、常連客はフンと鼻を鳴らした。足繁く通ってくれていた常連客は、もしかしなくても、祖父の代わりを務めていてくれたのだろう。見知った顔や物が与えてくれる安堵は何にも代えがたい。
 彼が外に出たことで、店には月子と月久の二人だけになる。よく見れば月久はコートも脱がず、手提げ鞄も持っていた。いつものように先んじて二階に上がったわけではないらしい。
 月久が歩みを進めて、カフェ・ユーリカの特等席に座る。脱いだコートと荷物を隣の席に置き、肩の力をゆっくりと抜く。グラスに水を注いで出せば、こくりと一口飲んだ。
「怪我がなくて、ほんとうによかった」
「うん……心配をかけました」
「知らせを受けたときは肝が冷えたものよ」
「すぐに連絡できなくてごめん」
「いいんだ。非公開だったんだろう」
 店の前で近界民に遭遇したことは、その時点では公にはできない情報だった。近界民の回収に来たボーダーの職員から説明を受け、機密保持に協力することを了承した。混乱が広がっては防衛にも支障をきたすという言葉に納得した面もあるし、それどころではなかった部分もある。
 月久への――最も近しい身内への連絡を怠ってしまったのは、後者の理由だった。
「それで。わしの孫はいったい何を悩んでいるのかな?」
 ぱちり。そのまなざしから逃れるように幾度か瞬きをしてみたけれど、こちらを見つめる月久の表情に変化はなかった。じっ、と自分を見つめる瞳は黒く、照明を受けてつややかに輝く。
 たくさんの光を反射する彼の瞳が好きで、幼い頃はしばしば見とれていた。そんなことを思い出す。血は繋がっているのに目の形はあまり似ていない。
「なに、が?」
 そっと首を横に傾けた。とく、と何かが跳ねる。それが自分の心臓だと頭の片隅で理解しながら、祖父の目を見る。自分と似ていない目を。
「当ててみようか。――迅くんだ」
 祖父は笑みを浮かべたようだった。いたずらが成功した少年のような、それでいて、すこし寂しげな。心音はととと、と静かに速くなっていく。
 視線を交え数秒、諦めて息を吐いた。この祖父にはどうしたってかなわない。
「……どうしてわかったの?」
「そりゃあ、おまえのおじいちゃんだもの。気付かなければならんだろうよ……今度こそは」
 今度。その言葉に思い出すのは、前のことだ。前――月子が月久に隠し事をしたのは、それが成功したのは、たった一度だけ。母との現状を黙っていた、あのときだ。
 苦々しい記憶である。最後まで隠し通すことはできなかった。けれど月久を相手に善戦していたとも言えよう。あっさりと看破された今とは大違いだ。
「まあタネを明かすと唐沢くんから訊いた」
 がく、と体のバランスが傾ぐ。ふふ、と月久が笑った。黙っておいてほしかったのに。唐沢への抗議は声にならない。
「なんでも解ってやれたらとは思うが、残念ながら祖父という生き物は孫のことがなんでもわかるわけではないようだ。……ま、他人のことがわからんのは当たり前か」
 独り言ちるような声だ。かちゃり、とシンクのなかの陶器が揺れる。作業を中断していたことを思い出した。残っている泡を洗い流さなければと手にとり、蛇口をひねってお湯を出す。じんとしみるほど熱くて、指先で流水をひっかいて慣らした。
「孫とはいえ、他人同士のこと。野暮な口出しはせんよ」
「……うん」
「本音を言うとしたいんだがね」
「例えば?」
 訊ねると月久は目を見開いた。いつもと同じように浮かべられたはずの笑みが崩れる。
 驚く理由はわかっている。月久は、この会話を終わろうかと言ってくれていた。以前までの月子なら、月久の気遣いに甘んじて、仕舞われた言葉を暴こうとはしなかっただろう。
 言わないでいてくれることは優しさだ。でも、誰かに言って欲しかった。おまえは間違っているよ、と。そうしたらきっと、この気持ちをこれ以上育てず、一息に間引くことができる。
「……いや、それでも言わんよ。口を出してしまってはつまらないだろう」
「おもしろいか、おもしろくないか、なの?」
「他人事だからの」
 いけしゃあしゃあと孫で楽しんでいることを告解した老爺は、仕切り直すように居住まいを正した。
「さて、そろそろおじいちゃんはお土産を自慢してもいいかい」
「……どうぞ」
 ため息混じりに譲った。人で楽しむのが趣味だと言われても納得しかないし、この祖父が決めたことを覆すのはとても稀だ。
 うじうじとした気持ちをひとまず胸の奥に収めて洗い物に手をつける。話を訊く態度ではないが、月久が相手ならばいいだろう。
「知人からもらってきたんだ」
 どん、とカウンターに置かれたのはガラス瓶だ。フラスコのような形をしていて、ちゃぷんと琥珀色の液体が波打つ。それと一緒に、底に沈んでいた球体もそのからだを揺らした。
 洗い終えた皿を水切り籠にいれて、きゅっと蛇口を絞る。前言撤回だ。見たことのない土産物に興味が湧いた。
「〝ポム・プリゾニエール〟という。ポムはフランス語で林檎」
 月久が球体を指差して笑う。ずいぶんと色は抜けているが、形は確かに林檎のようだ。ブランデーの中にあるせいか黄金色にも見える。
「カルヴァドスのひとつだ。カルヴァドスは覚えているか?」
「アップルブランデーでしょう」
「C'est bien(よくできました)」
 歌うような外国の言葉が機嫌の良さを窺わせる。瓶をじっと見つめ、あることに気付いた。瓶の口よりも、その林檎は大きい。ガラスをすり抜けでもしない限り入るはずもなかった。連想したのはボトルシップだが、まさか林檎を瓶の中で組み立てるわけにもいかないだろう。
「ポム・プリゾニエールで、閉じ込められた林檎、という意味になる」
 目敏く月子の疑問に気付いた月久がそう言って瓶を持ち上げ、くるりと回して見せる。なめらかな曲線をつくるガラスに継ぎ目はない。少なくとも見える範囲には。
「答え合わせはあとにしよう。レシピを教えるから、これでオーチャド・ティーを作ってもらえんかね、マスター?」

 オーチャド・ティーは英国紅茶協会公認のレシピだという。林檎の果汁とカルヴァドスを混ぜたブレンドティーで、直訳すれば『果樹園の紅茶』だ。
 冷蔵庫の中にボケつつある林檎があることを教えると、月久はそれでいいよと頷いた。
 ペティナイフでくるくると皮を剥いているあいだに、月久がカルヴァドスを開栓する。コルクの栓は蝋と金具で固定されているらしい。どこからか取り出したジッポライターで注ぎ口を炙っていた。
「漉すのはざるを使えばいいだろう。残ったのはカレーにでも入れようかの」
「うん、そうする」
 後から紅茶に加える数枚のスライスを残してミキサーに入れる。「どうせわしとおまえしか飲まんのだし」楽しそうな声が続き、ポン、と軽い音が響いた。無事に栓が抜けたらしい。
「知っておるか? カルヴァドスと名乗れるブランデーは、ノルマンディー地方で醸成されたものだけだ」
「シャンパンみたいに?」
「そう。材料や製法が同じだったとしても、その土地で作られたものでなければその名を使うことはできない……あぁ、茶葉はセイロンのブレンドにしよう。そうだな、ヌワラエリヤをベースにガルをすこし加えるといい」
 講釈をしながらも月子の動きをよく見ている。茶葉を保管している棚に指を伸ばした途端に言われた。二つの缶をとる。
 ヌワラエリヤもガルもセイロン――スリランカ産の茶葉の一種だ。誤解されがちだがセイロンというのはスリランカ産の茶葉の総称であって、ひとつの茶葉を指すものではない。スリランカの旧国名である。
 月久が囁く配合で二つの茶葉を合わせる。ブレンドに関しては未だ勝手がわかっていない。店を継ぐ前に学ぶ機会もあったはずなのだが、『まだ早いかの』と言われて未講習のままだ。
「さて、カルヴァドスをカルヴァドスたらしめるものは何だと思う?」
「その土地で作られるかどうかって、いま言わなかった?」
「わしの孫のくせに情緒のないやつめ」
 ケトルでお湯を沸かし、小鍋に目の細かいざるも用意する。月久はつまらなさそうに頬杖をついた。
 ミキサーを止めて、ざるを乗せた小鍋に中身を注ぐ。温めてから加えるのが英国流らしい。本当は茶葉も林檎で煮出すらしいが、そこまでしなくていいだろうとのことだった。ぽたりと落ちる果汁が溜まったのを見計らって、搾りかすを空いているボウルに移す。
「わしが思うにな。物事を定めるのは、それが如何にしてこの世にあるかという経緯ではない」
 いつになく深く沈むような声に、ちらりと様子を窺うと、月久と目が合う。やわらかな笑みが浮かび、その視線が懐かしむように頰を撫でた。
「そのモノをそれと定めるのは、情をこめて呼ぶ声だ。カルヴァドスは、そう認めて呼んでやることでしか〝カルヴァドス〟になれんのだよ」
 その言葉を頭の中で繰り返しなぞってみたけれど、月久が何を言いたいのかはよくわからなかった。首を傾げると、ふはっと息をこぼすように破顔する。 
「とまあ、そんなことを考えてみるとな」
 お湯が沸いたので茶葉の入ったポットに注ぎ、蓋をして砂時計を逆さに置く。
「百合子がこの街を出なかったのは――最期まで百合子でいてくれたのは、彼女をそう呼んだ人間がいたからだろうか、と」
 唐突に出てきた名前に手が止まる。いつもは『百合子さん』なのに呼び捨てるのは珍しいな、と、まず思ったことがひとつ。それから。言われてみれば、祖母は異国の人だったというわりに、名前は仰木百合子という和名だ。亡き祖母がもともと持っていただろう名前を、月子は知らない。
 こつ、と月久が人差し指の第二関節でカウンターを叩き、それから視線で砂時計を示す。見れば砂は半分ほど落ちている。果汁が入った小鍋を火にかけた。量が少ないから、火加減はごく弱く、とろ火だ。
「まあわしは、ろくに呼ばんかったわけだが」
 静かな声が滑り落ちる。
「今になってすこし、もうすこし、呼んでいたらと思ったりもしてな」
 そんな弱音みたいなことを言うなんて、めずらしい。と、思って。けれどその言葉は飲み込む。月久が百合子との思い出を語るのはいつものことだが、彼女への想いを訊けるのは貴重だ。指摘すると誤魔化されそうな気がした。
 ティーカップを二つ出して、お湯を注いで温める。ふつり、と小鍋の端に泡が立ったのを見て火を止めれば、砂時計の砂も落ち切っていた。
「紅茶と林檎はどっちを先に注ぐとかあるの?」
「MIF、MIAと同じだ」
「……つまり?」
「どっちでもいい」
 聞き慣れないアルファベットの羅列は『Milk In First』と『Milk In After』の頭文字らしい。ミルクが先か、後か。人によってはこだわりが強い部分。科学的に結論は出ているらしいが、結局のところ好みの問題だ、と言いたいようだ。
 日本語で言えばいいのに、とくちびるを尖らせると「勉強しなさい」と笑われた。
 先に果汁を注いで、それから林檎のスライスを浮かべ、紅茶で満たす。にごりがあるため綺麗な色ではないが、普通の紅茶よりもとろみがあって温まりそうだ。月久に言われるままストローを渡せば、月久はそれをスポイトのようにしてカルヴァドスを二、三滴カップに落としてくれる。ふわりと林檎の香りが広がった。
「答えは出たかい」
 月久がカップを持ち上げながら問いかける。月子も同じようにカップを持ち上げ、それからカルヴァドス――閉じ込められた林檎に視線をやった。
「ううん」
「それじゃあ、もう少し考えてみるといい。どうやったら食べられるのか、とかもな」
 微笑んで、月久はオーチャド・ティーをひとくち飲んだ。「ちとケチりすぎたな」呟きながらカルヴァドスの瓶を持ち上げる。足すらしい。
 カップに口をつけると、それだけで林檎と紅茶の華やかな香りに満たされる。くちびるを濡らせば熱く、飲み込めばほわりとしみる。爽やかな甘みは林檎の果汁、セイロンブレンドとカルヴァドスが味に奥行きを出す。
「おいしい」
 ほっと息をつきながら言うと、特等席に座る祖父は「そうだろう」と鷹揚に笑う。
「思い悩むときはあたたかいものを飲めばいいと相場が決まっておる」
 満足げな祖父の言葉を訊きながら頷いた。少し、前に進める気がする。


 なんとなく一人になりたくて降りてきた深夜のカフェ・ユーリカ。カウンターの上だけに灯された光はやさしく降り注ぎ、静かな店内には染み付いた珈琲の香りが漂う。空調を切ったせいで少し寒かったが、かえってそれが心地よい。
 特等席に座れば、いつもと違う風景がある。店を継ぐ前に見ていた、お客様の視点。カウンターに置いたフラスコ型のガラス瓶を小突いてみた。琥珀色のカルヴァドスが波立ち、林檎が揺れる。
 ――ポム・プリゾニエールは、種明かしされてみれば『なんだ』というものだった。
 作り方は単純だ。林檎の花が散って小さな実が結実し始めたころ――まだ瓶の口を通れる大きさのうちに林檎を瓶の中へ入れ、瓶を木に吊るしたまま育てるらしい。
 透明なガラスはもちろん陽の光を通し、瓶の口も塞がってはいないから、林檎は成長を続ける。瓶の口も通れないくらいに膨らんで、いざ収穫だと枝を切られれば瓶の中に落ちる。そうして出来上がるのが『閉じ込められた林檎』だ。知ってしまえばそれしか考えられないくらい、単純な答えだった。
「窮屈そう」
 こぼれおちた言葉にちいさく笑う。今のはなかなか情緒的だったかもしれない、なんて冗談を心のなかで遊ばせて、けれどすこしだけ頰を持ち上げるのが億劫だ。
 この林檎は、もう、ガラスを砕くことでしか外に出せない。下手に割れば、ガラスの破片はカルヴァドスが染みてやわらかくなった林檎に潜り込んでしまう。そうならないためには、ガラスを割ることを諦めるか、林檎が小さいうちに瓶を外すしかない。
 けれど、どちらも『この林檎』を取り出す答えにはならないのだろう。ただひとつの正解は『うまく割る』だ。
 ポケットに忍ばせていたスマートフォンを取り出し画面を幾度かタップする。念のため、と再受信を試みるも、届いたメッセージに彼のものはない。深くは考えず、入力欄をひらいた。何を打とう。思い悩む必要もなく、言葉は溢れた。

 お元気ですか。私は元気です。でもすこし、ほんとうは、顔が見れないとさみしいです。祖父から珍しいお酒をもらったんですよ。教えてもらった紅茶のレシピもおいしくて、それならアルコールも飛ぶから、迅くんにもおいしく飲んでもらえると思います。話したいことがたくさんあります。祖父が喋っていた薀蓄とか。あの知識はどこから湧いてくるんでしょう。もっと勉強しなければ、と思いました。勉強といえば、カフェラッテ、リーフも綺麗に作れるようになりました。祖父のお墨付きです。会えないあいだ色々あって、そのぜんぶを話したいです。話したくて、笑ってほしくて、それから。わからないけれど。とにかく――会いたいです。

 何一つとして文字にはできなかった。溢れかえる言葉にからだが追いつかなくて、ただ真っ白な画面を見つめる。薄闇の中で画面の光はあまりにも強く、視界がじわりと滲む。
 私は彼に何ができるだろう。
 胸の底に沈んだ想いに噛み付くのは自分の声だ。
 何かが、したい。何ができるかはわからないけれど、それでも何か。ただ、彼の役に立ちたい。

 彼がここに訪れないのは、たんに忙しいからか、それとも、月子が避けられているからか。不愉快に思われるようなことをした覚えはなかったが、そんなつもりはなくても傷つけたことがあったのかもしれない。それとも――迅はもう、月子の気持ちに気付いていて、それが嫌だったりするのだろうか。月子自身でさえ嫌だと思うのだから不思議ではない。こんな体たらくなのに迅が自分を好きかもしれないなんて思っていたのがおかしくて、ちいさく笑った。
 愚かで、情けないところを笑われるのでもいいから、会いたかった。いや――そんなことをしないひとだと知っているからこそ、会いたかった。
 前までなら、彼が訪れないことはこんなに悲しくて苦しいことではなかった。でも、前っていつだろう。一ヶ月前? 半年前? それよりも、『前』だろうか。
 惑う指先はそれでもスマートフォンを――彼との唯一のつながりを、手放さなかった。迷いながら、一文字ずつ言葉をつくる。
《こんばんは。いつも街のために、ありがとうございます。でも、すこし休憩したくなったら、ぜひぜひ、当店へお越しくださいませ。いつだってお待ちしております。冷え込む季節ですので、ご自愛くださいね。》
 読み返して、ふ、と息がもれる。なんて営業メールだ。でも自分と彼の関係では、そんなものしか送れない。そもそも、彼が顔を見せないのは十二月に入ってからのことで、頻度で言えば他の人と同じくらいになった程度で。
 どうして冷静になれないのだろう。自分の気持ちに気付かなければ、いくらだって待てたはずだ。この気持ちを、行き着くところのないこれを、ぶつけたって仕方ないのに――どうして、こうしてしまうのか。
 震える手で宛先を選び、送信を押す。疲労感が肩にのしかかり、それに圧されるままカウンターに寄りかかる。低くなった視点はちょうどカルヴァドスに沈む林檎と同じ高さだ。
 これは、恋なのだろうか。愛なのだろうか。そうなのかもしれないと思いつつも、そう呼んでしまうことにためらいが残っていた。こわかった。恋という不確かなものが、月子から愛を奪ったものが。それを自分が抱けば、いつか、何もかも台無しにしてしまいそうで。
 それでも――今、彼のために何かしたいと思ったことに嘘はなかったから。
 閉じ込めるべき思いが、すこしだけ、こぼれてしまった。


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