空は青くなくていい

 空が違う。見上げた天球に口元が歪むのを止められはしなかった。三門市よりもさんざんと輝く星々。太陽がひとつと、月のようなものがいくつか。見える星は、太陽以外は全て人の暮らす星だという。地球がもつ『奇跡の惑星』なんて肩書きも霞む現実だ。
「なまえ、どうかした?」
「んーん、何でもないよ。それよりハト、3時の方向マークして。何か動いてる」
「――了解」
 かちゃりとかすかな音がして、黒いスーツを身に纏った彼女がスコープを覗く。
 ざまあみろ。ハトが焦がれた青い空はここにはない。


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